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【対象:小学校高学年以上】和真は有名進学校で落ちこぼれ、中三で公立中学に転校した。小五のときに父を亡くした樹希は、母と妹と三人、生活保護を受けて暮らしている。『カフェ・居場所』で顔を合わせながら、互いが互いの環境を理解できないものとして疎ましく思うふたりだったが、「貧しさゆえに機会を奪われる」ことの不条理に、できることを模索していく。立ちはだかるのは「貧困」という壁。中学生にも、為す術はある!
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Posted by ブクログ
初めて安田作品に触れた きっかけはNHKのドラマ 誰にでもむこう岸はあるような気がする ドラマも素晴らしかったが、小説も素晴らしかった
生活保護制度に対する現状や課題を問題提起してくれた本 二人の中学生男女(山之内和真と佐野端希)が軸となって、親からの学歴に対する過度な期待とプレッシャー、ヤングケアラー問題、家庭内暴力、外国人に対する日本人の偏見、社会的弱者への周囲の対応等とても考えさせられる内容でした。 感情移入したわけではありま...続きを読むせんが、読んでいて自然と涙が出ました。 文中にもありましたが、様々な制度というものは非常に分かりにくく、それを必要としている人達が理解困難なものが多い。しかし損をしたくなかったら、ちゃんと理解して利用しないといけないという話は妙に腑に落ちました。 扱っている内容は少し重いものですが、非常に読みやすく一気読みさせられたのは、ひとえに筆者の表現力の高さがなせる技だと思います。 大満足の一冊でした。
児童文学ではあるが、生活保護やヤングケアラー、人種差別、毒親問題などをうまくまとめている。読後感は爽やか。 中高生に薦めたい本。
『むこう岸』というタイトルに惹かれて手に取った本。 難関私立中で落ちこぼれ公立中に転向してきた和真と、生活保護を受けながら母と妹の三人で暮らす樹希が、出会うことからこの物語は始まる。 広くて深い川の向こう側とこちら側。 「貧しい生活レベルの人」「恵まれた家で育ってきたくせに」と反発する二人がどうな...続きを読むっていくのかとハラハラしながらページをめくった。 二人を繋げる「カフェ・居場所」があって良かったと思う。世話焼きなマスターがいて、先生と呼んでくれるアベルくんにも出会えた。樹希にとっても唯一安らげる居場所がここ。穏やかに時間が流れる空間にいると、人は落ち着いた気持ちになり心を開いていくように思う。 「生活保護家庭の子は、大学に行っちゃいけないの!」不条理な制度に納得がいかず自分で調べ始めた和真を応援したくなった。 「生活保護制度には例外や裏技がある、理解しづらい制度も知らなければ損をする、生活保護法は無差別平等」だと和真から教えて貰い、樹希は家族と将来の自分のために動き始める。 生活保護だけでなく、ヤングケアラー、いじめ、人種差別、格差などの問題を抱える本作だが、児童書なのでわかりやすい。光が見える終わり方にも好感が持てた。 「生活保護法 第一章 第二条『すべての国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる』」これを読んだとき、ぼくは人間を信じてもいい気がしたんだ。 和真の言葉が心に響いた。
生活保護、貧困、ヤングケアラー、現代の色々な問題を詰め込んだ児童文学。 生活保護を受けている側がなぜ、そういう状況になったのかもしっかりと描写されていて分かりやすい。 貧困のループって身近にいないと分からないし考えないですよね。 そういう人を見下してはいけない、いつも娘に言い聞かせています。 弱き...続きを読む人を助ける、主人公のかずまくんは立派です。 勉強が出来ることは素晴らしい、でも弱き人に手を差し伸べられるそんな人はもっと素晴らしいです。
生活保護を受けて暮らす樹希の家庭環境・苦悩を知り、生活保護についての見方が変わった。 こどもの力だけでは貧困生活から抜け出すことも大学に行く事も夢を抱くことも容易ではない。そんな不自由な生活の状況下でも、クラスメイトからは、「生活保護って書いたTシャツ着ればいいんじゃね?みんなに養ってもらってるん...続きを読むだから、それくらいしないと不公平じゃん」と心無い言葉を浴びせられたりする。 生活レベル・学歴・容姿・出身地など似た者同士に対しては仲間意識を持ち、相反する者には敵対意識を持つ。そういう線引きを無意識に誰もがした事があると思う。心当たりのある人は、樹希と和真の言葉が心に刺ささったり、胸を締め付けたりするだろう。 特に印象に残った言葉は、 ・哀れんでいるものは、自分の放つ匂いに気づかない。哀れまれているのもだけが、その匂いに気づくのだ。 ・みんな、高い月謝の受験塾に通わせてもらって、夜の弁当なんか作ってもらって、塾が終わると車で迎えに来てもらって、合格してバンザイバンザイと喜ばれて、また私立中学の高い月謝を払ってもらえるんだろ?ーー中略ーーおもしろくないんだ。ものすごくお腹がすいている横で、美味しそうなパンをまずそうに食べてるようなやつらが。 当たり前と思っている事がそうではない事を改めて痛感させられた。全体を通してとても考えさせられる一冊だった。
YAコーナーで見つけた一冊。 とても読み易くて、2人の中学生の気持ちが溢れてそのまま文章になっている。 穢れなき2人の思いは、ひしひしと伝わってきて思いのほか感動し、涙する。 私立中学へ入学したものの、そこから落ちこぼれて中学3年で公立中学へ転校した山之内和真。 父を亡くし、鬱病で働けない母と3...続きを読む歳の妹の世話をして生活保護を受けている佐野樹希。 2人が唯一、共有できる「カフェ・居場所」 そこで得られるのは自由な時間だけではなくて、お互いのことや自分のことを見つめ直すとても大切なものだった。 生活保護法について必要にならなければわからないことも知ることができた。 だが、みんなが知っているわけではなく深く追究しないと知らずに苦労している人もいるだろうと思った。 中学生から読めるので、ぜひ多くの人に読んでほしい本である。
児童書とは思えない濃い内容だった。無知や分断って、とてもこわい。子は親を選べないし、逆もまた然り。気がつかないだけで、「むこう岸」は自分の周りにもたくさんあるのかもしれない。
中学生なのに偉いなあ…という感想をもつ自分が情けない。率直に、もっとしっかり生きていかなければと思った。知らないことがいけないのであって、知っていれば何とかできることができる世の中にはたくさんある。
置かれる立場が違っても、お互いを知りたいと思い、助けになりたいと思いやることができれば、きっと社会はよくなっていくんじゃないかと思った。 和真の心が強くしなやかに成長していく様は、見事だった。悩んでもがいて、自分の答えを見つけ出す姿に引き込まれた。
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