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アメリカ人の父親と日本人の母親の許に生まれた、トーマス・アンダーソンこと浜仲富夫。日米開戦を機に、日本人として生きることを強いられる。坊主頭で国民服を着て、剣道を習い、国策映画では悪役アメリカ人を演ずる。そして入営。青い眼の初年兵は、異父妹への想いを支えに、軍隊生活のつらさに耐える。だが、山西省から米兵と対峙するレイテ島に転進。極限状況の中でアイデンティティを問う、戦争文学の白眉。異色の戦争文学……日米混血の日本兵、その壮絶な自己喪失の過程を描く。
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Posted by ブクログ
自分に中立的な歴史的知識欠けているからか、戦争文学は苦手だ。 ただこの墓碑銘は戦争を題材にしながらも、自己同一性を問うのが主題となっている。 「戦争反対」とか「平和」なんていう面倒な主張はない。 多少日本人の描かれ方が気になるかもしれないが、これはこの世代の作家のデフォルト設定とも言えるのであ...続きを読むまり気にしないのがいいと思う。 日米のハーフとして生まれたトミイ・アンダーソンこと浜仲富夫が日本兵になり、自己の存在を見つめる物語。 浜仲自身の心境は非常に分かり易く描かれていると思ったのだが、小説としては凡庸。 映画の話も後々大きな意味を持ってくるかと思いきや、あっさりと使われただけで終わってしまったし、他にも濃厚に描写してもいい場面が多くあったのに、軽く流しているような気がしてならなかった。 朝丸・沢村・森・・・など印象深いキャラクターも徐々に存在感をなくてしまい、ラストも何だか駆足で終わってしまう。 また裏テーマとして異父妹との近親愛があるのだが、いまいち上手く物語に絡めていなかった。 やり方次第では大長編になったであろうが、この作品としては消化不良。 ただ何でも「寓話」というタイトルで続編があるらしく、それは非常に気になる。 近親愛の結末など消化不良に終わった部分が読みたいと素直に思える作品ではあった。
『寓話』を読んでいると、また読みたくなる。『寓話』を読まなくても、きっとまた読みたくなる。何回目で面白さが減るだろうか、なんとなく想像もつかないような、小島信夫のすごさににやりとする。
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