一揆の原理

一揆の原理

935円 (税込)

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一揆といえば、虐げられた民衆が農具や竹槍を手に極悪非道な領主たちに立ち向かう、そんなイメージを抱きがちだ。しかし、それは戦後歴史学が生み出した幻想に過ぎない。史料を丹念に読み解くなかで見えてくるのは、革命や暴動といった固定観念とはほど遠い、権力者とのしたたかな折衝のあり様だ。一揆とは、暴発的な武装蜂起ではなく、既成の社会関係では対応できない危機に直面した人々が「契約」によって生みだした、新たな社会的つながりなのだ──。これまで語られてこなかった一揆の実像と、現代の社会運動にまで連なる結合の原理を、新進の中世史家が鮮やかに解き明かす。

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一揆の原理 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    本屋で見かけて購入。非常におもしろかった。一揆を、政権打倒を目指す「革命」や「階級闘争」とみなすマルクス主義歴史学的な見方を否定し、実際は政権の存続を認めた上での「訴訟の一種」「したたかな交渉」だったという研究成果。中世は百姓だけでなく武士も僧侶も一揆を結んでいた、集団だけでなく個人でも一揆を結んで

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    2021年05月02日

    Posted by ブクログ

     「一揆」という言葉から暴力的な抵抗運動というイメージを抱いていたが、この本を読んで人と人の繋がりこそが一揆の本質であることが分かった。反原発デモやアラブの春を一揆の文脈で解釈しており、歴史的な観点から現代社会を見直す醍醐味を味わえた。

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    2021年01月17日

    Posted by ブクログ

    【相手にふりかかった問題を自分の問題として考え、親身になって、その解決に努力する。実は、これこそが一揆という人間関係の本質である】(文中より引用)

    権力層への抵抗という意味も込めて使われることの多い「一揆」。時代ごとに異なるその言葉が意味するところを探るとともに、一揆が抱える現代的な意義についても

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    2019年08月19日

    Posted by ブクログ

    漫画の「カムイ伝」やクロサワ映画「七人の侍」などの影響で、一揆とは農民が一致団結し、竹槍を手に悪代官らに生死をかけて立ち向かう強訴活動というのが世間一般のイメージ。が、古文書を調べていくと、一揆とは常に大掛かりなものではなく、竹槍を使った形跡もない。農民だって死は怖いし、標的にされた代官や大名も年貢

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    2019年01月23日

    Posted by ブクログ

    “一揆”というモノが「関わる人達が互いに対等で、一定程度の匿名性も在って、或る種のパフォーマンスも含めた誓約のセレモニーを経る場合も在る契約のような関係で集まり」であったという辺りに、筆者は色々な国々で政権交代を促した市民運動や、何かを訴えようと発生するデモとの共通項や相違点を視ている…
    中世から江

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    2017年04月09日

    Posted by ブクログ

    徳政一揆は、土倉・酒屋といった京都の金融業者(というより高利貸し)を襲撃している。借用証書を強引に奪いかえすという行為も散見される。このため「古い研究」では、「悪徳高利貸しに苦しめられた民衆の怒りが爆発し、徳政一揆を起こした」と考えられてきた。論文調で書くと、「貨幣経済の農村への浸透を契機とした都市

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    2016年01月18日

    Posted by ブクログ

    旧来の『階級闘争史観』から脱し、史料の読み解きに立脚した「リアルな中世日本の、人のつながり」としての一揆を描き出した名著。

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    2021年05月29日

    Posted by ブクログ

    一揆といって一般に連想される「百姓一揆」は一揆の典型例ではなく、むしろ亜種である。
    一揆とは中世における人々の連携・連帯・コラボレーションの総称であり(意訳)、現代にも通じるものがあるというのが著者の見解である。
    ざっくりまとめすぎて、我ながら大胆かなと思う。

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    2018年12月31日

    Posted by ブクログ

    本書は武闘派で過激な一揆より、目立たなくも一般的な交渉のための一揆に主眼を置く。文中で「だろう」「思う」の語尾が多くことから、歴史として解明が難しいジャンルであることが想像される。

    中世の一揆を中心に、現代のデモとの相違やsnsとの類似性を指摘しながら、読む者の一揆に対する想像力を深める工夫が多い

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    2017年11月09日

    Posted by ブクログ

    ポスト社会史の一揆研究。
    従来の階級闘争史観を批判し、少し前の社会史の呪術的視点を批判し、等身大の一揆像を追求したあたらしい一揆研究(の一般向け教養書)。特に後半部で交換型の一揆に触れつつ、危機的な状況のなかで新たな「縁」の構築として契約を重視した中世人のマンタリテに言及しているのはよかった。

    0
    2016年01月28日

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