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精神を病み入院していたジュリーは、企業家アルトグに雇われ、彼の甥であるペテールの世話係となる。しかし凶悪な4人組のギャングにペテールともども誘拐されてしまう。ふたりはギャングのアジトから命からがら脱出。殺人と破壊の限りを尽くす、逃亡と追跡劇が始まる! 緻密きわまる物語の構成を通じて人間存在の脆弱さを描きつつも、読む者をクールな快楽と戦慄に酔わせる暗黒小説の最高傑作!
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Posted by ブクログ
素晴らしくスタイリッシュな作品。 他のハードボイルド小説が野暮で芋っぽく見えるほどだ。 ただ、あまりに淡泊で読みごたえが無いと思う人もいるかもしれないが そういう人は放っておいて問題無い。 無駄の無い文体は読み手にも洗練を要求するのだ。 シンプルだからと言って人物が記号化していたりはしない。 ...続きを読む登場人物の衝動的で意味の無い行動が人物に深みを与えている。 元精神病患者の主人公、敵役の殺し屋、 内面と行動が伴わずただ暴力だけが積み重なっていく。 一度味わうとまた戻って来ざるを得ない独特の世界がある。 映画などとは違う「文章」の楽しみに溢れた小説。 ストーリー自体はわりとありふれたものだけれど そぎ落とされた言葉の力は骨太な魅力で迫ってくる。 単なるハードボイルドとは一線を画す実験作とも言える。 文章を愛する人ならば食わず嫌いをせずに是非一度読んでいただきたい。
まるで映画を見ているよう…登場人物の余計な描写や心情が一切排されると、小説はこう言う感覚を生むのか、と衝撃を受けた。ジュリーの精神疾患の危うさと同じくらいギリギリの所にいるその他の登場人物たち。ペテールを抱えて、写真で見たお城に向かってひたすら逃げるジュリーに姿は鬼気迫り、精神に異常を来した女性が執...続きを読む拗なまでに追い続けた結果だったとしても、ペテールが救われた事に変わりない。
通勤電車の中と昼休みと就寝前に分けて1日で読んだ。小気味良い展開なので、ほんとにあっという間だった。 不条理バイオレンス犯罪小説と思いながら読んでいたが、最後はしっかりハードボイルドミステリーとして終わった。振り返ると、確かに仕掛け人はこいつしかいないよな、と思えるのに、あまりのドダバタ劇だったの...続きを読むで、伏線回収があるとは夢にも思わなかった。
70年代ノワール小説の最高峰マンシェット新訳だ。精神病院を退院したジュリーは企業家で慈善家のアルトグに雇われて彼の幼い甥っ子ペテールの世話を始める。屋敷のまわりではアルトグの昔の共同経営者で凶暴なフェンテスがうろついていた。ある日散歩中の2人は凶悪な4人の殺し屋に誘拐されてしまう。ジュリーは1人を殺...続きを読むしてペテールと共に脱出。殺し屋は容赦なく追いかけてくる。銃撃、破壊、殺人、流血の逃走劇。殺し屋の背後に誰がいるのか?誰が味方で誰が敵なのか。実は登場人物全員がイカれている。善悪の話ではない。生きるか死ぬかの本能の話だ。そしてハッピーでもバッドでもないサバサバしたラストが印象的だ。 昔はノワール小説というとペーパーパックの三文ハードボイルドばりにワイルドに訳そうとしたりイカれぶりを強調しすぎて白々しかったが、この翻訳は現代風で気負いがなくて読みやすい。
これが古典なのか、と思うわね。でも50年前か。50年前というとけっこう昔か。そういう意味じゃ古典か。そして年を取ったものだ・・ それはさておき中身は古典というよりノンストップ・バイオレンス・アクション、って感じ。これをハリウッドの適当な監督が映画化すれば絶対にB級の酷いものになる、間違いない。 思...続きを読むわせぶりなタイトルにはきっと深い意味が隠されていて、読んでいる中で伏線を回収しているのか、タイトルの意味も理解できるのか、でもそんなの関係なく、ギャングから逃げるシーンは手に汗握って大好きよ。
裏社会の闇で身悶える者どもの情動を切り詰めた文体でクールに描き切るロマン・ノワールの雄マンシェット1972年発表作。マンシェットは推敲を重ねる完全主義者の面もあったらしく、作品数も限られている。単に冗長なだけの小説にはない張り詰めた緊張感がみなぎり、贅肉を極限まで削ぎ落とした骨肉のみで、人生の一瞬の...続きを読む光芒を鮮やかに切り取る。暗黒小説の神髄に触れたいならば必読の一冊といえる。 親を失い、おじとなる企業家に引き取られていた少年が何者かに誘拐される。直前に世話係として雇われていた若い女も共に連れ去られるが、隙を突き二人は脱出。だが、執拗に追跡する誘拐犯らとの攻防は熾烈を極め、壮絶なるバイオレンスが展開していく。 登場人物はすべからく「壊れて」おり、繰り返される衝動的暴力の噴出は無残な結末を予感させるものだが、プロットは緻密に練られており、展開に不自然さは無い。少年を連れて逃げる女は、精神的疾患を抱えており、企業家の男に何故選ばれたのかも後に解明されるのだが、当然のこと女が常道から外れて誘拐の首謀者と殺し屋らの予測を裏切る行動を取る。さらに誘拐犯のリーダーとなる男も重度の疾患を胃に患い、強烈な痛みに悶えつつ少年と女に肉迫する。それらの捩れた構造が、緊迫した情景の中にもアイロニカルでユーモラスなムードを創り出している。 マンシェットの筆致は冴えわたっている。テンポを殺すことなくスタイリッシュな日本語として甦らせた中条省平の翻訳も見事だ。
実業家の甥と、その世話係の女が誘拐犯にさらわれる。二人は命からがら誘拐犯の手を逃れ、どたばたの逃走劇が始まる。 話のプロットやミステリの本筋自体は別段珍しいものはない。 ただもう、世話係の女、本作の主人公?のジュリーが奮ってる。 ジュリーは精神病院を出たばかり。過去の経験から極端に警察を嫌い、抑う...続きを読むつの気がある。 誘拐犯たちをもって、イカれた女と言わしめるジュリーの逃走劇に、周囲がガンガン巻き込まれる。 ドンパチと派手な立ち回りの連続だし、ジュリー以外の登場人物も一癖ある連中が多いし、最後の場面にいたっては舞台となる建物までグロテスク。 その全てをさも当たり前のように、淡々とスピーディに描いていくテンポの良さが魅力。 ジュリーだって自分が何してるんだか、何がしたいんだかよく分かってないかもしれない。読者にもそれを考えさせる暇を与えない。 過度な心理描写を排して、目の前でまさに事件が展開されているような臨場感が持ち味の、良作エンタメ。
中条昌平が岡村孝訳の『狼がきた、城へ逃げろ』をタイトルからして誤訳であるして、自分がもっとマンシェットの雰囲気をと、ペンを執り直し、改めて訳したものだそうだが、見た限りでは、訳者なんていうレベルではなくマンシェットのラディカルなパワーしか感じることができなかった。 他者訳のタイトルを批判しなが...続きを読むら「愚者」を「あほ」と読ませたり「城塞」を「おしろ」と読ませたり、いかにランボオの中原中也訳をイメージしたからと言ってマンシェットをわがものにしたというのは、傲慢に過ぎる。だからフランス語の専門家は嫌いだ(元フランス語専攻学生の嘆き)。 とは言え、この本がマルレーヌ・ジョベール(あの『雨の訪問者』のヒロインですね)の主役、セバスチャン・ジャプリゾ脚色で映画化されていることは知らなかった。訳者が酷評しているが、見ていない人間にそんなことを言うな、解説で! とは言え日本未放映の映画だからどっちでもいいか。『いかれた女を殺せ』というこの訳者が勝手につけた未邦訳映画タイトルは、むしろ岡村孝的な訳のように思うんだけど。 なお、いずれにせよ、絶版で読まれる機会の薄い本書が広く紹介され、新たにマンシェットのファンを生み出すきっかけを作ってくれた訳者・版元の功績は大きい。これを機に、中条さん、どんどんマンシェットを翻訳できないのでしょうか? 版元が売れると判断してくれない限り難しいとは思うのだけれど、本というのは売れ行きだけの文化ではないのだからねえ。
普段、ロマン・ノアール系統は読まないのに 妙に文章が「入って来る」のが楽しかった* どうも、こういう文体が好きらしいと 気づきましたとさw
主人公たちが殺し屋たちから命からがら逃げる逃げる。彼女らが通った後は死屍累々(かな?)。 余計な心情も入ってなくて、スカッと読めました。
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マンシェット
中条省平
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