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善人も、偽善者も、悪人もバルザックの描く人間がおもしろい! 妻の不貞に気づいた貴族の起こす猟奇的な事件を描いた表題作、黄金に取り憑かれた男の生涯を追う「ファチーノ・カーネ」、旅先で意気投合した男の遺品を恋人に届ける「ことづて」など、90篇あまりもの作品からなる《人間喜劇》と呼ばれる作品群から人間の心理を鋭く描いた4篇を収録。ひとつひとつの物語が光源となって人間社会を照らし出す短編集。
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Posted by ブクログ
「人間喜劇」から4編を選んで編まれた短編集。訳はラブレーの宮下さん。 とにかく表題作が良いんだけど、どれを読んでもバルザックはやっぱりいいなとしみじみと感じていた。バルザックの皮肉はよい。
グランド・ブルテーシュ奇譚 ことづて = Le message|| ファチーノ・カーネ = Facino Cane|| マダム・フィルミアーニ = Madame Firmiani|| 書籍業の現状について = De l'etat actuel de la librarie
バルザックの本を初めて読んだ。5篇の短編集で一番気に入ったのはファチーノカーネかな。それ以外も読み応えはあったけど、エンディングが結構童話集でお決まりのパターンという感じのものが多かった。でも内容の節々に哲学的な要素が含まれていて、マダムフィルミアーニに至ってはかなり特殊な始まり方をしていて私にとっ...続きを読むて新鮮に感じられた. 一つだけエッセイが載っていた。19世紀のパリの書籍業についてでもっともな批評が書いてあった。
『グランド・ブルテーシュ奇譚』という短編ののっけから、 ホラーでぶっとぶような話。 ≪人間喜劇≫と解説ではあるけど、どちらかというとトラジティー寄りではないかと思う。 グレート・バルザック。
19世紀フランスの作家バルザック(1799-1850)の短編4編と評論1編。大都市パリの喧噪と汚濁に塗れながら、もはや「回帰すべき田園」も無ければそこで幻想されていた「人間の本来性」なるものも喪失してしまっていることを痛切に認識し、近代社会という暴力的に運動する機構のなかで落魄した群衆の匿名的な情念...続きを読むと生理の有象無象それ自体のうちに何か美的なものを見出す新たな美意識を、ボードレール(1821-1867)に先駆けて描いている。この現代的な美意識にあっては、ギリシア以来古典的な「真-善-美」の三位一体が解体されている。 「英雄や発明家、街の物知りや、ごろつき、悪人、有徳の士や背徳者。だれもが貧困に押しつぶされ、困窮に窒息し、酒におぼれ、強烈なリキュールで精神を鈍磨している。・・・。この悲しみの町で、どれほどの冒険が敗北を喫し、どれほどのドラマが忘れ去られてしまうのか、あなたには想像もつかないにちがいない。そこには、おそろしいできごとや、すばらしいことが、いくらでもあるのだ! 想像力だけでは、そこに隠されている真実にまでは届かず、また、だれも彼らの中に入りこんで真実を発見できはしない。悲劇にせよ喜劇にせよ、こうした驚嘆すべきシーン、いわば偶然が生み出した傑作を見いだすにはどん底にまで降りていく必要があるのだ」(「ファチーノ・カーネ」1836年)
多数の作品から成る『人間喜劇』より厳選された 短編4編+評論「書籍業の現状について」を収録。 「早過ぎた埋葬」(!)系の表題作が猟奇的だが、 それにしても、この時代(19世紀前半)のヨーロッパでは 上流階級の人々が配偶者に隠れて若い恋人とあれやこれや……は 普通のことだったんだろうかと首を傾げる。 ...続きを読むきっと珍しくはなかったんだろうな――と思っていたら、 巻末の年譜にバルザック自身の「あれやこれや」が記されていて 笑ってしまった。 未亡人を口説いている最中に 家事を引き受けてくれたメイドさんのような女性と「できちゃって」 いただとか、やりたい放題。 人生の経験値が高ければ、それだけ 様々な人物造形を緻密に行えるテクニックが身に着くだろうけれど、 いやはや何とも(笑)。
夫ある女が若い愛人が出来た。夫にばれそうになる。さあ、どうなる。 1800年代のフランス。なんだかんだ、まだまだ男尊女卑。 名誉を重んじる貴族の世界。 バルザックらしき若者が、田舎町グランド・ブルテーシュで、謎の封鎖された豪華な館を見つけます。 立ち入り禁止になっています。 年老いて亡くなった...続きを読む貴族の夫人の館。 遺言で、死後50年(だったかな)は、誰も入ってはいけない、と…。 その謎を、ヒトから聞いて知っていくミステリー。 話は遡ります。 地方貴族の美人な奥さんが居る訳です。これ、つまり年老いて死んだ館の貴族夫人の若かりし日。 奥さんですから旦那さんがいる訳です。 なんだけど、この奥さんが、スペイン人の貴族と不倫の恋に落ちます。 このスペイン人の若い男性っていうのが、捕虜なんですね。戦争の。 捕虜なんだけど、まあ、貴族の時代ですから、その地方でゆったりもてなされている。 脱走しなければ、名誉ある待遇な訳です。 そして、夫の目を盗んで屋敷で密会します。そこに夫が帰ってきます。逃げる暇がなくて、続きの小部屋に隠れます。 怪しんだ夫が部屋に入ってきます。緊張です。緊迫です。 夫は、小部屋に、間男がいる、と気づくわけです。 ところが、妻が、誰もいない、という。あたしを信じないの?という。そこを開けたら、信用してないってことね。終わりよあたしたち。みたいなことを言います。 さあどうする。 どうなる。 ネタバレになりますが、まあこの本を読もうという人はまず居ないでしょうから(笑)、書いちゃいます。 夫は開けません。 ただ、その場から一瞬も外さず、逃がしません。 そして、召使に命じて。 左官屋さんを呼びます。 妻が見ている前で、小部屋の入り口を煉瓦で埋めてしまうんです。 妻がいろいろ言います。でも、「誰もいないと言ったじゃないか」「…」。 そして、妻は倒れてしまいます。 夫は、看病せねば!…と…妻が嫌がるのに、ぴったり部屋に付き添います。 夫か、夫の意を受けた召使が、必ず、必ず、24時間、部屋にいます。 そして…2週間…それ以上…。 怖いですねえ…。 と、言うお話です。 「グランド・ブルテーシュ奇譚」 これは、表題になるだけあって、実に面白かったです。戦慄です。 バルザックさん、と言う人も、読んだつもりで読んだことが無かった(と思う)んですね。 特段理由なく、ふらっと購入して読んでみました。短編集。 時代背景とかの勉強をさほどせずに、「まあ、分からないことは飛ばせばいいや」というくらいの雑な読み方。 他に 「ことづて」 若き日のバルザックらしい青年。旅の空で意気投合した、これまた若き青年。 この青年には人妻の愛する人がいる。今から会いに行く。 だけど事故死してしまう。 その悲報を、仕方なく、その人妻に伝えに行く。 でも、行ったら当然夫もいる… 「ファチーノ・カーネ」 若き日のバルザックらしき青年が、老いて盲目のイタリア人から、身の上話を聞く。 運命の恋に翻弄されて、受難したイタリアの日々。隠された財宝…。 「マダム・フィルミアーニ」 未亡人のマダムと若き青年の恋愛。 名誉とモラルの為に財産を手放すことで、ふたりは愛を深める。 「書籍業の現状について」 エッセイと言うか、論考というか。 19世紀のイギリスやフランスの出版界。 芸術に理解の無い資本家に出版を握られてて問題だ、みたいな。 表題作以外は、さほど感心はしなかったんですけどね。 わりに、「年上の女性(人妻)と青年の情事」が好きなんだなあー、という(笑)。 こういうところから、「フランスっぽい」というイメージができるんだろうなあ、と思いました。
はじめて読むバルザック。短編だからなのか、読みやすい。語り口が、シャーロックホームズの短編に似てる。19世紀ヨーロッパの共通構造なんでしょうか。 次は長編かな。
「グランド・ブルテーシュ奇譚」 「ことづて」 「ファチーノ・カーネ」 「マダム・フィルミアーニ」 「書籍業の現状について」
バルザックの本を余り面白いと思って読んだ事は、実はあまりなかった。もったいない事をしていたのかもしれない。そして、宮下訳はいつも期待通りの面白さがある。短編の選び方にもセンスがあると思う。
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