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《ハーメルンの笛吹き男》伝説はどうして生まれたのか。十三世紀ドイツの小さな町で起こった、ある事件の背後の隠された謎を、当時のハーメルンの人々の生活を手がかりに解明していく。これまでの歴史学が触れてこなかったヨーロッパ中世社会の「差別」の問題を明らかにし、ヨーロッパ中世の人々の心的構造の核にあるものに迫る。新しい社会史を確立する契機となった記念碑的作品。
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Posted by ブクログ
巻末の石牟礼道子の解説「泉のような明晰」も含めて、読んだ後胸がいっぱいになる歴史書。ハーメルンの笛吹き男の伝説の解明だけでなく「学者」も伝説の型(パターン)作りに多かれ少なかれ加担しているということ、それを持ってして民衆を中心にすえた歴史学を追究するために必要なのは知に驕らない謙虚な心構えであること...続きを読むなど、力強い言葉が綴られている。
阿部謹也氏が1988年に刊行した歴史学書。 私が大学入学とすぐに教授に薦められた本の中の一冊。 グリム童話「ハーメルンと笛吹き男」は実は13世紀に実際に起こった出来事である。という歴史に興味がなくても惹きつけられる例を基に、中世ヨーロッパの社会を解き明かしていく作品。 歴史学をこれから学ぶ大学...続きを読む生や、これまで歴史学に興味がなかった社会人などにオススメ。 作者と一緒にまるで謎解きをしながら歴史を解明していくような爽快感が魅力な作品です。
読みやすい
ハーメルンの笛吹き男という御伽話を立体的な解釈で、当時の背景を生々しく書き出している。記録や世相から分析して検証していく流れは、まるで推理小説のようであった。
#タメになる
歴史とともに物語を読むことで、今の自分では考えられない状況も、そよときならそうなるだろうと思わせられる。歴史とセットで物事を知ることの重要性を学ぶ。
ハーメルンの笛吹男の伝説というか、おとぎ話というか、この伝説がどうして生まれたのか、1284年6月26日にドイツのハーメルンで130人の子どもが失踪したという出来事が、歴史的事実であると確認した上で、渉猟した文献を丹念に紐解き、慎重に歩みを進めながら、ヨーロッパ中世における民衆の暮らしを浮かび上がら...続きを読むせるもの。知的好奇心を掻き立てる極めて興味深い一冊でした。
迫害、差別、そして、格差社会。 そんな時代背景が、この物語として語り継がれてきた核になっている。 いや、大半の物語がそうか? どの国や地域にも、伝説として残っている話がある。 事実が問題だと深堀りすることも当然必要だろうけど、真意という意味では、史実がどうだとかはあまり関係も意味もない気がする。 ...続きを読む そこに共通して感じるものは、何なのか? 大切なものと、どう向き合っていくのか。 一人一人に何かを芽生えさせる物語が大事ですね。 地政学とキリスト教。 ヨーロッパの歴史を知ろうとすると、この事象を通してでないと見えてこない事もある。 ハーメルンという街も、深い部分でそれが繋がっている気がした。 未来へ伝えられ、語られ、残っていく。 ミステリアスであることは、人の想像を掻き立て、考える余地を残してくれる。 もしかすると、はっきり分からないことこそ、人が活き活きと出来る大事なファクターだと感じる。 簡単に手短に、知れる、分かる、理解できる。 そこに、現代の闇が出てきているのかもしれないですね、、。 謎は解けないでもどかしい。 それが、ある意味、ベター!。笑
グリム童話の「ハーメルンの笛吹き男」。ドイツのハーメルンの町に現れた男が笛の音でねずみを駆除してやるのだが、町は彼に報酬を支払わない。怒った男は笛の音で町の子どもたちを連れ去ってしまうというお話。ちょっと怖いが教訓も含んでいる、よくできた有名な童話だ。 一方、中世ドイツの地方都市の文献を研究してい...続きを読むた著者は1284年のハーメルンで130人の子どもたちが行方不明になっていた事実を知る。つながった童話と事実。なぜ子どもたちは消えたのか、笛吹き男は実在したのか、著者の歴史探求がはじまる。 本書では、中世ヨーロッパの社会や生活、宗教、差別などを説明し、笛吹き男のような旅芸人やネズミ捕りの職人が実在しことを明らかにする。また、当時は植民のための市民の大量移住が起きていたし、子供だけの十字軍も編成されていたらしい。著者はこれら事実を組み合わせ、先人の歴史家たちの発表なども紹介し、様々な説を検討する。 が、13世紀の小さな町での出来事だ。本書では断定的な決着までには至らない。しかし、それはしょうがないことだし、わからないままでいいんじゃないのか。ハーメルンでの悲劇が童話として現代まで語り継がれたことで歴史のすごさ、おもしろさを十分に味わえるのだから。
面白かった 歴史が時代の突出した部分や特異点ばかりを探していくのに対し、ここではそんな「表舞台」とされたものの裏にある、時代の変化に右往左往するしかない一般庶民、その反動として時に自暴自棄に極端に走ってしまう一般庶民の歴史が紡がれている。 事件が少ない故にあまりに長い、あまりに長い中世の一般庶民。場...続きを読む合によってはドイツでは19世紀まではそういうものが残っていたということで。 こういうのを読むと、キルヒャーの見え方も随分と変わってくる。 また、商業の復活などのルネサンスへの萌芽も見えてくる。 12世紀ルネサンスというものとは程遠い世界だが、中世後半にあって教会と諸侯の権力バランスの変化もあり激動の最中にもある。 まさにこの頃、アリストテレスの再発見などから世界が変わっていく準備が、進んでいる。 あとは、ゲルマン民族にとって、あくまでカトリックが外来の文化である、という感覚は面白かった。 土着の、ゲルマン的な文脈を見逃さないようにしている。 定着民による秩序世界と、放浪者の世界とが常に緊張感を孕んで接しているのも面白い。 ストレンジャーへの恐怖は、街の外の世界を知らない人がほとんどの定着民にとって、どのようなものなんだろう。 半ば、モンスター的な。レイシズムとは違う、まるでマレビトのようですらある放浪者への恐怖。 レイシズムは別にある。ユダヤ人へのそれだ。ユダヤ人はいつの時代も差別されている。それは、その閉塞的な規範のせいで、都市にいても常にストレンジャーだからだったのだろう。 そして、高利貸しの恨みもあった。 放浪の楽士が受け入れらるのは、定着によって、であり、放浪を続ける楽士は相変わらず差別されてたというのも面白い。 大事なのはやはり、定着しているか動いているか。 顔を、素性を知っているかどうか。 どこからともなくやってきて、変な音楽で人々をハイにしてお金なりなんなりを得て去っていくような、そういう存在は愉しさと恐ろしさが表裏をなしている。 ここ、と、ここではないどこか、とが中世にはあるのだ。 それは、都市と都市間や自然であったり、日常と魔術的世界であったり。 なので、ハーメルンの笛吹にあるのは、その間を動く人がいる、ということ、日常に非日常を持ち込む、もしくは日常を非日常に連れ出す、そういうインターフェイスが存在している、という恐怖なのではないか。 1284年6月26日という日付や、130人という数字は、歴史学的に重要かもしれないし、そこからこれだけの多くの視点がうまれるのには驚くべきことだか、どうしても普遍化して理解したくなる自分としては、この本を経て理解したのはそういうものだった。 そして恐らく、これは中世の日本にもあっただろう。 各地の申学とかがもたらしていたものには、ここに通じるものがあるんではないか。
面白い。子供の頃に絵本で聞いたことがあったが、こんなに様々な考察がされているとは思わなかった。ハーメルンの成り立ちや、庶民の暮らしぶりについても述べられていて、非常に勉強になった。
内容はかなり本格的で重い。でも読んでいくと筆者と一緒に謎解きをしてるような感覚がして、それが面白くするすると読めた。 ハーメルンの笛吹き男の伝説を当時の一般庶民や更にその下の被差別階級の人たちの生活や文化をもとに紐解いていくという内容で、ハーメルンの笛吹き男自体の検証も興味深かったけどそれと同じく...続きを読むらいあまり語られることのない庶民の置かれな状況や歴史を知ることができるのが魅力的に感じた。 差別や階級化をされる側の描写が現代の基準から考えるとあまりにも悲惨で、そういった感情の発露として口伝でハーメルンの笛吹き男を含む色々な伝説が語り継がれていったんだなと。 一方で差別や階級を作る側の心情描写も興味深かった。自分とは違う存在への恐怖やその恐怖を発散させるための差別の正当化がリアルに感じた。 この本に書いてあるような庶民や被差別階級の人たちが抱えてる問題は現代においても決して無関係なことではなく、自分たちとは違う属性の人たちへの偏見やそこから生まれた都市伝説的なデマは現代にも沢山あるよね。 数百年くらい経ったらそれらもハーメルンの笛吹き男みたいに伝説になるのかな、それとも当時と違って当たり前に印刷やカメラやインターネットがあるからまた違った結果になるのかな。
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ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界
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阿部謹也
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