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科学の発展は、科学では解決できない問題を生み出す歴史でもあった。本書は平和を希求する科学者の集まり、パグウォッシュ会議に触発されて書かれた。会議の姿勢は評価しつつも、科学の発展そのものが文明や人類を破壊しうるという認識が科学者の側には足らないと指摘する。二十世紀を代表する批評家が遺した警世の書。
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Posted by ブクログ
この本を手にするきっかけとなっているのは、加藤尚武(ひさたけ)氏の『現代倫理学入門』の最終項--15科学の発達に限界を定めることができるか--の中で、レイチェル・カーソン『沈黙の春』の一文を引用し核兵器に関する科学者の責任について語っていたのが始まりです。 昨年の福島原発事故以来、反原発と声高々...続きを読むに反対運動が盛んになってきていること、そしてこの日本が抱える歴史、そしてこれからの未来への不安、これらを考えたときに、唐木氏の本に出会えたのは偶然でしょうか。私と同様にこの本を手にされた方はすくないかもしれません。原爆製造を早急に推し進めるようにルーズベルト大統領に進言したアインシュタインの心と原爆が広島に投下されたときの科学者としての葛藤、ウランに中性子を照射すると、原子核に分裂が起こり、巨大なエネルギーを発散することを発見した、オットー・ハーンの発見。この発見が原爆という発明につながってしまったが、その発明が発見へつながった時の責任はどこに在することになるのか。このような観点から唐木氏が無くなる直前まで書き続けた一冊です。絶筆となってしまい、完成はしていないのですが、哲学者唐木順三氏が生きていらっしゃったら、さて先の原発事故とこの忘れがたい原爆の日をどう考えておられるであろうかと。原発事故そのものにたいして科学者の責任を追及することはほとんどないだろうが、はて、それを扱う人間の責任は免れないことであることは自明であろう。人災といい続けられている電力会社の責任追及は尻切れトンボになっているような気がして仕方が無いが、その責任はどのような形で示されるのか、今後注目すべきことである。 原爆被害と原発被害、同じ核利用を感情論にまかせてダメだダメだというのは簡単なことだとおもう。後世までに被害をもたらすものの担保はすべきではないというのは当たり前だ。だが、原発はなぜ作られ、なぜ利用せねばならないのかを繰り返し問い続けることが先決で、今の私には正直なところ答えがでないので反原発でも原発推進派でもない。殺戮のための原爆製造とエネルギー利用のための原発の推進とは同じ核のありようでも別問題だ。毎夏、原爆の日を忘れることはないが、今年はこの一冊の本で考え方に大きな変化があったのは事実だ。来年の夏、原発問題がどのように処理されているのか、見守りたいとおもう。 (8/6,8/9に想う・・my blogより)
これは素晴らしい。 唐木氏がまだご健在で、福島原発の事故や極端なまでに自動化が進む現代社会を目の当たりにしたら、どういった意見を述べていただろうか?興味は尽きない。 引用がかなり多い印象を受けた為、限りなく★5つに近い★4つ。
原発に関する言説をもって吉本隆明は産経に大きな追悼を贈られメデタシメデタシであった。しかし、唐木順三の節義はそれをゆるさないだろう。許さないのは古来文学だけだった、文学は決して許さなかった、ということを改めて感じさせてくれる。
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