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そっちはどうですか? あいかわらず最悪ですか? こっちはこっちでまぁまぁ最悪かな! 無責任な暴力、すれ違う意識、のしかかる思い込み―― 8人のきららの8つの人生が照射する 残酷でかすかにあたたかい世界の物語 人気モデル兼女優の偽物、痴漢された女子高生、特別な日を撮影するカメラマン、推しの若き死を願う会社員…… あちこちに現れて 誰かであり 誰でもない 名前のない私たちみんなが 「きらら」として生き抜いている
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Posted by ブクログ
藤野可織が描く女性たちが大好きです。他作家と比べるのはよくないかなと思いつつ……山田詠美や西加奈子的な女性たちほど強い訳ではなく、でも小川糸的にふわふわしてる風でもなく、江國香織や村田沙耶香の女性ほどぶっとんでる感もなく。親近感が湧く、友だちになりたいなーという塩梅の登場人物たちが好きなのです。 ...続きを読む収録作のひとつである「消滅」で、香港のデモや選択制夫婦別姓問題について議論を交わしつつもラオス料理に舌鼓をうつ3人の女ともだちの会話がまさにそんな感じで、ああこの塩梅わかるーーー!と頷いてしまいました。
青木きららという女性が各編に必ず登場する短編集だが、青木きららは同一人物ではない。現代日本に似たパラレルワールドのような世界を舞台としているが、夢の世界を彷徨っているみたいな読み心地。 「わかった」とは言えないが、響いた。寓意や暗喩のようなものを、掴めそうで掴めない、掴めたと思った瞬間にふぁっと...続きを読む霧になって消えてしまうような、「なに、わかった気になってるの」と氷の眼で見つめられているような緊張感が、このわかりやすさの求められる時代に、独特の歯応えを差し出してくる。 以下、個人的な備忘メモ。タイトル前の記号は、「◯=好き」「◎=特に好き」を表す。 ◯トーチカ 青木きららの偽物を探せ、てな感じではじめちょっと不思議面白く読める。終章につながる。 ・積み重なる密室 出張先(京都かな?)のホテルにて、女性専用フロアへのグレードアップの申し出を受ける。他の部屋も選べるのか?と質問すると、スタッフは顔を曇らせ、他のフロアは満室だという。 ・スカート・デンタータ スカートが、許可なく持ち主の体を触る者を食いちぎる歯を持つ。 ◎花束 川で殺された青木きららの死を悼む人々が全国から手向けの花を持って河川敷に集まる。センチメンタル?が束になって、謎のカタルシスが。 ◎消滅 青木という女性が、将来子どもができたら「きらら」と名付けたい、青木きらら、なんて素敵な名前だろうと夢想するが、よほどの強い心を持って青木姓を守るために戦わない限りまあ無理だろうということをわかっている。夫は何の努力も必要とせずに自分の姓のままでいられるというのに。短編集を貫く象徴的な名前「青木きらら」が存在できないという矛盾。 ◯幸せな女たち 結婚式の写真撮影という仕事から、女の幸せについて。結婚だけが幸せではないみたいな次元の話ではもちろんなく、女が幸せになることを心から憎む存在が描かれる。 ・美しい死 クリスマスケーキ理論。 ・愛情 「愛情が制度の肩代わりをすることがないよう整備された社会」。 ◎トーチカ2 はじめの章の続き。マイナポイントみたいなものの恩恵を受けながらマイナンバーカードみたいなもので管理されないと自分が誰なのかも証明できないような世界で。ラストが刺さる。こうする以外どうしたらいいかわからなかった、ただそこそこ安心してそこそこの暮らしをしていきたかっただけなのに、「今、『放送局』の翼の下で震えるよるべない隷属者として立っている近子は、同時に特権を行使する冷酷な共犯者だった。」
物語の設定やら登場人物の背景やら なかなか理解できなくて、 ものすごく不安になりながら読み始める。 ちょっとこつが分かってくると 今度はそこに潜んでいたテーマに圧倒されてしまう。 私が生きてる場所って、もしかしたら ものすごく不自由な世界なのではなかろうかと 別の不安がムクムクと心に沸き起こって来る...続きを読むのだ。 女性ならば思わず「そうだったのか!」と膝を打ちたくなる言葉がたくさん出てくるのだけれど 男性はこの物語をどう読むのだろう。 特に「スカート・デンタータ」・・・ 感想を誰かにきいてみたいものだ。
青木きららという女性がキーパーソンとなる短編集。 どの話にも青木きららが登場するが、同一人物ではなく、話自体にも繋がりはない。しかし、どの物語も、同じような空気をまとっているような気がした。 静謐だが、どことなく不安。 きっと不安に感じるのは、読者である自分たちが普段気づかないようにしている不条理や...続きを読む未知のものを、あえて全面に押し出しているからだろう。 社会にあらがうことなく受け入れ、そこでの不満はあれど不都合はないくらいの幸せを享受できれば良しとする「トーチカ」。 未知のものに対して、ささやかな抵抗を試そうとする「積み重なる密室」。 この2篇が特にお気に入りの話だった。
はじめて読む作家。 現代作家をもっと読んでみようキャンペーンの一環で手に取る。 読み始めてすぐには不条理小説なのかな、と戸惑う。 二話目、三話目に読み進めてやっと外格が掴めてきた。 青木きららという名前の周辺にある、主に女性の上に起こるさまざまな現象と現代の世界との摩擦。 『花束』、『幸せな女たち...続きを読む』、『愛情』のところが面白かった。 フェミニズム文学、と括られてしまうのだろうけど、この本をそんなふうに束ねないで、と思った。 『幸せな女たち』の、結婚における苗字のくだりも泣けてくる。 いま読めて良かった。 毎日毎日みんなが感じていることをうまく言い当ててくれたことに感謝。 短編集が最初のトーチカ、最後のトーチカ2に挟まれているので、そういう仕組みの 番組 なのかなと思った。
短編集。 ちょっと不思議且つ怖いような世界観で、どの短編にも「青木きらら」という名の人物が出てくる。名前が同じなだけで各短編のきらら達は何の関係もないが、まず、ちょっとインパクトのある名前だなと思う。 苗字が「青木」だからこそしっくりくるというのに共感。「大久保きらら」だと何だか語感が悪い気もする(...続きを読む全国の大久保きららさんごめんなさい)。 「スカート・デンタータ」が一番面白かった。スカートが痴漢の指を食い破るという過激な犯行に及ぶのに、誰もがそれを肯定している世の中で怖かった。そりゃもう履くしかないよね、自衛のためにも。夜な夜なスカートの歯をブラシで磨く人達を想像すると奇妙だが、皆がやるようになれば意外とすんなり受け入れられるものなんだろうなとも思う。 「美しい死」も好き。「女は25歳まで」という女性の結婚適齢期をクリスマスケーキに例える表現を信奉している主人公の、推しへの思いが何とも共感しにくいが、分かる気がする。ちなみに主人公は女性で、異性を25歳までしか愛せないと言う。 建前を語れば、いくつになっても人間は素敵と言いたい。しかし、本音を言えばやはり若い頃の肉体、つるっとした肌等は歳を取ればもう戻らないので若ければ若いほど良いと思わないでもない。主人公のように自分の思想に正直に生きていくのは良いかもしれない。 ただ、周りに言うと反感を買うのは目に見えているから心の内で思っているだけである。その"自分だけが持つ秘密"感がまた甘美なんだろうな、きっと。
さまざまな「青木きらら」たちの物語を集めた短篇集。シュールでユーモラス、そして少しほっこりするかもしれない読み心地の一冊です。 お気に入りは「スカート・デンタータ」。ある日痴漢に対して文字通りに牙をむいたスカートと、そのおかげで強くなってゆく女性たち。その状況に憤慨し苦悩する痴漢の主人公。もちろん痴...続きを読む漢はダメですよ。こんなことが起こったとしたら、多少はいい気味だとも思います。だけれどまるで被害者であるかのように悲哀を切々と語る主人公の姿がもう面白くって仕方がありませんでした。違う、悩むのそこじゃない。 「花束」」「消滅」はシュールな光景と、愁いを抱えた物語の対比が印象的でした。無数の花束や無数のビニール傘という視覚的なイメージが鮮烈です。
共通しない「青木きらら」が共通する短編集。 スカート・デンタータが好き!こんな夢みたいに苦しい話に憧れずに済む日が来ますように。こんなに苦しい話を夢見ないといけない現実がなくなりますように。視点人物の歪みと諦めと自覚に、勝ったとは決して言えない青木きららに悲しくなった。次々読みたくなって、少しずつ...続きを読む読むつもりが読み切ってしまった。
最初、設定を理解するのに時間かかりました が面白かったです トーチカ、トーチカ2が自分には 読みやすかったです
9篇を収録した短篇集。驚くのは、全篇に“青木きらら”が登場することだ。最初と最後の作品は繋がっているので、別人格の青木きららが8人登場する。主人公のときもあれば、脇役(しかも憎まれ役!)のときもあり飽きさせない。そして描かれている内容もなかなかシュールだ。 藤野さんの著作は『来世の記憶』しか読んでお...続きを読むらず、合わない作家だと思っていたが、本作はとても好みだった。
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