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いにしえより、鳥、蝶、蜜蜂、心臓などに託されてきた魂の形象。それらは、人間が無辺際の虚空を宿し、宇宙の反映でもあることの表れとして捉えることができる。例えば、水鳥は、その自在な動きにおいて、肉体の束縛を離れた魂のありかたと照応するものであっただろう。古人は、そこに単なる比喩にとどまらない、確かな実感を込めたのではなかったか。夢のようでありながら、しかし真実でもある霊魂について、明澄なまでに想念をめぐらした詩人の代表的エッセイ。
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Posted by ブクログ
多田智満子『魂の形について』(ちくま学芸文庫2021年11月第一刷)の感想。 小説好きにはユルスナールやシュオッブの翻訳者として知られているであろう詩人の、エセー。形象を通じて古人の霊魂観を視つつ、それらを包含する大きな世界観を探る様な内容。読み易く、読後感は軽やか。 的確・懇切なちくま学芸文庫版解...続きを読む説も有難い。
古代、人の魂はどのように考えられてきたかを考察したエッセイ。倭や平安時代、古代ギリシア、エジプト文明や神話を見ると場所や時代が違いながらもある共通点があることに気がつく。それはユングの唱えるところの集合的無意識に通底しているようだ。読んでいてとても興味深く、中でも古代エジプト文明や神話に興味を持った...続きを読むので、この辺りの著作を探して読んでみたい。
人間が想起してきた「魂の形」とはなんだったのか、というテーマで日本や中国の神話や伝承、古代エジプト、ギリシアの神話、インド神話、キリスト教のモチーフなど時間と文明を広く渡って思索が展開する。 蝶や蜜蜂、鳥など、翼あるものの中でも特定のモチーフが隔たった文明で共通して魂を表す形として用いられるのが面白...続きを読むい。テーマの力もあってか、生と死、文明を移ろっていくうちに夢うつつのような気持ちになってくる。文章は固めだけど、不思議とふわふわ軽く頭の中を流れていく印象なのでそのせいもあるのか。 「しかし魂について人が想いめぐらすことは、みな夢のように根拠がなく、夢のように真実なのではあるまいか」と著者は書いているが、想い描かれる魂、その矛盾やあいまいさをはらんでいながらも力強いさまは確かに「夢のように真実」としかいいようのないものだった。
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